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第4話「白銀の柄」

倉庫での惨劇から生き延びたトモタケとマーカスは

なんとかマリオ邸に辿り着いた。

 

「幸い、誰にも見られることなく帰ってこれたな」

マーカスは玄関の扉を閉め、ホッとしたように膝から崩れ落ちる。

 

「マリアちゃんになんと言えば・・・」

トモタケは震えた。

 

「・・・!?」

 

家の雰囲気がおかしい・・・!?

人の気配がする・・・

 

すると神々しい衣装を身にまとった男が廊下の奥から静かに現れた。

「マリオさんの娘は安全な場所に避難させました」

その男は落ち着いた態度で語りかけてくる。

 

「誰だ?てめえ?」

マーカスは驚きつつも、強気の姿勢で対応する。

 

「あなた達のこと、というよりもウルフを監視していた者です」

はっとした表情の2人を気にも留めず監視人は話を続ける。

 

「ウルフとの大立ち回り、御見逸れしました」

「しかし、このままでは彼の兄から報復を受けるでしょう」

「御2人は刃狼族という組織をご存知ですかな?」

 

「いえ・・・」

トモタケは監視人の話に圧倒されつつも、なんとか返答する。

 

「ウルフはヤクザ崩れですが、その兄は刃狼族の首領なのです」

どうやら刃狼族というのは、ヤクザ組織のことの様だ。

 

「刃狼族は狼の力を使い勢力を拡大していきました」

「刃狼族のメンバーは至る所に潜んでいます、もちろん街の衛兵の中にも」監視人

 

「さっきから言ってるがあんたは何者なんだよ?」

マーカスは苛立ちながら聞く。

 

「我々は刃狼族に対抗するための組織です」

「御2人には、何か特別な力がお有りのようですね」

「我々はこれを機に刃狼族を壊滅させようと思っています」

「しかし、我々の組織は狼の力を弱めるのに精いっぱいなのです」監視人

 

「興味深い話ですね」

トモタケは無理やり捻り出した感想を言う。

 

「あなた達には白銀の剣を探してほしいのです」監視人

 

「いやちょっと待ってくれ、その剣って何なんだよ?」

マーカスは戸惑いつつも、とりあえず質問した。

 

人狼は太古から存在しています」

「もし人狼がそのまま繁栄していれば、

人間はとっくに絶滅しているか家畜にされているでしょう」

「しかし、神は人間に力を与えました」

「その1つが、白銀の剣なのです」監視人

 

「場所の目星はついています」

「あなた達に拒否権はありません、断れば人狼達から報復を受けるのですから」

監視人の言葉を疑う余地はなかった。

 

なぜなら、2人は外の世界の事を何も知らないのだから・・・

 

「じゃあ、行ってみるか」

マーカスがそういうと

「待ってください」

監視人は2人を引き留める。

 

すると監視人は自分の懐から白く輝いた柄のような物を取り出した。

 

「これは白銀の剣の柄です」

「きっとあなた達の旅の助けになるでしょう」

監視人はそう言ってトモタケに白銀の柄を握らせる。

 

「マリアちゃんを頼みます」

トモタケは決意の感じられる声で別れの言葉を告げるのだった。

 

深夜

 

2人は白銀の剣(刃)があると思われる、雪山付近に辿り着いた。

 

「このまま、雪山を上るのは危険だ」

「夜が明けるまで、どこかで眠ろう」

マーカスはトモタケに提案する。

 

トモタケもその提案を受け入れ、休める場所を探した。

 

やがて、2人は公園に辿り着く。

 

「この時期に公園で野宿は危険すぎる」マーカス

 

2人はしばらく公園を歩いていると、

暗闇から誰かが走ってくる。

 

「ダッダッダッダッ」

「すいません、私は組織の者です」

暗闇から何者かが話しかけてくる。

 

「組織って、どっちの!?」2人

 

「すいません、味方です」

「宿を用意したので使ってください」

「それとこれを・・・」

暗闇から何者かが封筒を渡してくる。

 

中には日本円で15万円ほどの紙幣が入っていた。

トモタケ達は礼を言うと宿に向かった。

 

予約されていた宿は少々ボロボロだが、

特に罠などもなく、2人ともグッスリ眠れた。

 

昼近い朝

 

宿の女将さんに貰ったおにぎりを持って、

雪山の登山口に向かう2人。

 

何もない道がしばらく続いていたが、

しばらく歩くとヤクザ風の黒いスーツの男が3人たむろしている。

 

「ちょっと通りますよ」

トモタケは通りますのジェスチャーをしながら前を通る。

 

「待て」

「トモタケとマーカスだな?」

髪を後ろになで上げている代表らしき男が話しかけてくる。

 

「なんでお前ら俺達の居場所知ってるんだよ」

敵だと察したようにキレるマーカス

 

「ウルフが死んだという事は、我々の存在が知られているという事」

「ならば、白銀の剣が人間の手に渡るのを阻止しなければならない」

3人の代表はゆっくりこちらに右手を伸ばす。

 

「お前、どこかで見た事あるなと思ったが、ウルフの兄貴か?」

マーカスは後ずさりながら質問する。

 

「フフフ・・・

あいつもこんな餓鬼どもにやられるとは思ってなかっただろうに・・・」

「冥土の土産に教えてやろう、俺の名はジャッカル

ジャッカルは右手を伸ばしたまま、にじり寄ってくる。

 

「手を伸ばしてくるのやめろ」

マーカスは憤慨して物申す。

 

やがてジャッカルの右手の爪は伸び、短剣の様に鋭く尖ってゆく。

 

そして、逃げる間もなくトモタケの胸にジャッカルの爪が突き刺さった。

 

「トモタケッ!」マーカス

 

胸に侵入していくジャッカルの右手が「ジューゥッ」っと音をたて、

それと同時に肉の焦げる臭いが辺りに充満する。

 

「あれ?痛くない」トモタケ

 

「グワッ!」

ジャッカルは太い声で叫ぶと右手を引っ込める。

 

ジャッカルの鋭かった爪は焦げて崩れ落ち、指は焼けただれている。

 

「首領、どうしたんですッ!?」

ヤクザ達は驚いてジャッカルに駆け寄る。

 

トモタケの胸ポケットが白く輝きだした。

 

「なるほど、こんな効果があるんですね」

トモタケは察したように白銀の柄を取り出した。

 

「馬鹿なッ!?それは紛れもなく白銀の剣!」

「なぜ貴様なんかがそれを持っている!?」ジャッカル

 

トモタケは白銀の柄を握りしめ、ジャッカルを目掛けて拳を構えた。

 

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