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第5話「スノウリィ・マウンテン・フラッグス」

トモタケの拳は神聖な光を纏い、

 

一閃!!!

 

しかし、とっさに部下の1人がジャッカルをかばう。

 

「ウワアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

部下が白い光に包まれながら爆散する。

 

「くッ・・・一旦引くしかないようだな・・・」

ジャッカル達は人狼特有のスピードで逃げ出した。

 

「ふう・・・」

トモタケとマーカスは、ほっと胸をなでおろす。

 

「しかし、人狼側にこちらの手の内を見せすぎている・・・」

「早急に白銀の剣を手に入れないとまずいな・・・」

マーカスはそう言うと、2人は急いで雪山に向かった。

 

雪山に差し掛かると冷たい風が2人を襲う。

 

「寒い・・・」

トモタケは震えていた。

 

もっと防寒準備をしっかりしてくるべきだったと2人は後悔するが、

それでも2人は人狼に手の内を晒した手前、足を止める事はできない。

 

「あれは・・・!」

マーカスが指さす方向を見ると、そこには防寒服を着た男が立っていた。

 

「私は味方です、御2人の防寒服を用意しました」

「私達が手伝えるのはここまでです、ご健闘をお祈り申し上げます」

男は2人に防寒服を手渡すと吹雪の中に消えた。

 

山頂に近づくたび雪の量は増し、2人の足に絡みつく。

寒さと積雪量が2人の体力を奪っていく・・・。

 

しかし、順調に歩みを進めていくと山頂が見えてきた。

だが、2人の目の前に約45°の急斜面が待ち受けている。

 

「迂回しましょう」トモタケ

 

「ゴゴゴゴゴゴ」

突然、前方の急斜面にひびが入り、

雪の層が雪崩となって2人を飲み込もうとする。

 

「走れ!あの林まで!」

マーカスは左にある林を指さすと2人は全力疾走する。

 

「わああああああああああああ」

 

「ドーン」

雪の波が全てを押し流していく・・・

 

しかし、2人はなんとか林に辿り着き難を逃れた。

まっすぐ逃げていたら飲み込まれていただろう・・・

 

「もしかしたら、これは白銀の剣を人狼達から守るために、

計算された彼らのトラップかもしれませんね」

トモタケは何の根拠もないことを口にするのだった。

 

2人は斜面を迂回すると、いよいよ白銀の剣が見える場所まで到達する。その距離約100メートル。

 

「あれは!まさか!」

「神々しい光の中に刃が、そびえ立っている!」

様に見えた。

 

ここからは一本道、幅約4メートル。

落ちればただでは済まないが、慎重に進めば問題ない。

 

「そこまでだ」

2人が後方を振り向くと物凄い速度で2人の人狼が走ってくる。

おそらく、ジャッカルとその部下だ。

 

「まずい!」

トモタケとマーカスが走り出すが、人狼達はあっという間に距離を縮めてくる。

 

「仕方ねえッ!」

マーカスは人狼達の前に立ちはだかる。

 

「マーカスッ!」

 

「白銀の柄を持っているのはお前だ」

マーカスは人狼1人に飛びかかる。

 

しかし、マーカスの腹部は簡単に引き裂かれた・・・

 

が!

 

「何ッ!」

人狼1人は驚きの声を上げる。

マーカスは最後の力を振り絞り、人狼1人を抱きながら崖を転げ落ちていく。

 

「なんて餓鬼だ・・・」

残った人狼はそうつぶやくと白銀の剣に向かって走り始めた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

トモタケは雄叫びを上げ、がむしゃらに走り始めた。

 

白銀の剣まで約50メートルの所までくると人狼はトモタケに追いつき、

まるでビーチ・フラッグスの様に雪に刺さった白銀の剣に向かって、2人は並走する。

 

トモタケは追い抜かされる前に、

白銀の柄を握った右の拳を人狼目掛けて解き放つ。

 

しかし、人狼はその速度を活かし、その拳を簡単に回避した。

 

「あの刃をこの絶壁から落としてしまえば、貴様にそれを探す気力は残っていないだろう!」

人狼はあっという間に、白銀の剣が手に届く距離にまで移動した。

 

そして、人狼はその白銀の剣に向かって手を広げた!

 

「熱ッ・・・!」

刹那、人狼の背中に熱された金属の様な物が押し当てられたような気がした。

 

「熱いようッ!」

人狼の背中に触れた白銀の柄は爆ぜ、

すごい力で人狼を進行方向に押し出した。

 

「サク・・・」

すると人狼の顔に、雪に刺さっていた白銀の剣がめり込んでいき、

人狼正中線状に真っ二つにした。

 

「スパフォオオオオオン・・・」

2つになった人狼の体は空中で燃え盛り、灰になって消し飛んだ。

 

トモタケは人狼が白銀の剣へ手を伸ばす前に、

人狼目掛けて白銀の柄を投げていたのだ。

 

「終わったのか・・・」

トモタケは白銀の柄と刃の元に歩みを進め、

それらを拾い上げた。

 

「私にとって多くの命が失われた・・・」

 

「でも、これがベストだったんだ・・・」

 

「世界のために私達ができたのは・・・」

トモタケはそうつぶやくと、雪山を下っていった・・・。

 

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