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第3話「人狼嵌め」

翌日の朝方

 

トモタケとマーカスは、

マリオの所属する狩猟仲間の会議に参加。

場所はマリオの家、

マリオを含め6人の猟師が集結した。

 

「この2人がウルフの子飼いたちだ」

「この街で起きている大半の盗みは

ウルフの指示によって行われていると白状している」

マリオは狩猟仲間達に伝えた。

 

「なるほど、ではその餓鬼どもはどうする?」

角刈りの中年狩猟仲間のブレットが恐ろしい顔で2人を見た。

 

「ヒヤッ・・・!」

 

「彼らは盗みを強要されていたに過ぎない」

「情報提供をするという条件で許してやろう」

マリオはおそらく、この場で強い発言力を持っているのだろう。

それ以上2人の罪を咎める者はいなかった。

 

「2人はいつも、夕方頃に街はずれの倉庫で奴と会うらしい」

「今夜そこに向かう、こういう行動は早いことに越したことはないからなあ」

マリオは作戦をみんなに伝えた。

 

作戦は単純だった。

まず、トモタケとマーカスが倉庫に入り、ウルフの姿を確認でき次第、

猟銃を携えた狩猟仲間6人衆が倉庫に突入するというもの。

 

「あ、すまない、今夜は用事が・・・」

20代前半の狩猟仲間アンソニーは小声で言う。

 

「まったく、近ごろの若いもんは付き合いが悪いのお?」

長髪で髭を貯え、筋肉質で小柄な中年狩猟仲間グリコーゲンは茶化しながら言う。

 

確かにウルフはヤクザ崩れとはいえ、

もし殺すことになってしまえば何者かの報復も考えられる。

関わりたくないのも当然だろう。

 

「確かにこの作戦は、非常に危険なものになる・・・」

「無理強いはできない・・・」

「だが、このまま放っておけば、この街はもっと危険にさらされることになるだろう」

「勇気ある者はぜひとも参加してほしい!」

マリオはこの場にいる者を奮い立たせるように語った。

 

「私も怖いのでやめて置きます」

トモタケははっきりと自分の意見を言った。

 

「ええッ!?」全員

 

「お前・・・!」マーカス

 

「トモタケ、君たち2人が来ないと成功しないんだ」

「ぜひとも参加してほしい!」マリオ

 

「すいません」

トモタケの決意は揺るがなかった。

 

結局この作戦の参加者は、

マーカス、マリオ、ブレット、グリコーゲン、

パワー型の中年狩猟仲間アナグマ、寡黙な中年狩猟仲間ゲイツの6人で行う事となった。

 

夕方

 

6人はウルフが居ると思われる街はずれの倉庫に向かった。

 

狩猟仲間の5人は猟銃を手に、

マーカスも念のため刃渡り180mmの腰鉈をマリオから借りていた。

 

マーカスが倉庫のシャッターの前に立つと、

狩猟仲間がシャッターの両脇に待機する。

 

作戦開始だ。

 

「ガラガラガラッ」

マーカスがシャッターを開ける。

 

「おやおや、今までどうしていたんだマーカス?」

「心配したんだぞ」

倉庫のシャッターから約30メートル離れた位置に、

上半身裸の痩せた中年の男がパイプ椅子に座っていた。

ウルフである。

 

「ウルフさん、状況が変わった」

「あんたに聞きたいことがある」

マーカスは恐怖を抑え、毅然とした態度で発言する。

 

そして、狩猟仲間の5人が倉庫の中に躍り出た。

さらに一斉に猟銃をウルフに向けて構える。

 

「動くんじゃないッ!」

マリオが吠える。

 

「マリオさん、なぜこんな所に?」

ウルフは落ち着いた態度で問いかけた。

 

「マーカス、シャッターを閉めろ」

マリオの指示に従い、マーカスは素早くシャッターを下ろした。

 

「ありがとう、寒かったんだ」

ウルフは露出した上半身を掌で触りながら冗談を言う。

 

「この状況を見て慎重に発言しろ」

「貴様の正体は分かっている」

マリオは発砲する意思をウルフに伝え脅した。

 

「分かってしまったか・・・」

「あなた達がここに来たということは、

私が狩猟仲間を密かに食らっているという事実がバレてしまったということですね?」

ウルフは包み隠さず話すと、立ち上がった。

 

「座れ・・・!」

マリオの震えながら怒鳴った。

 

「今夜は刺激的な夜になる」

ウルフの体がみるみる筋肉質に変わっていくのと同時に、

銀色の体毛が全身を覆っていく。

 

「まさか、本当に・・・」

マーカスが思わず呟く。

 

「撃てッ・・・」

マリオが声を上げたのと同時に、

 

獣は高速で移動し、猟師仲間の5人をまとめて横一線に引き裂いた。

 

「ギャッ・・・」

マリオ達5人は断末魔の叫び上げると腹部からおびたたしい血を噴き出し、

地面に臓物をぶちまけて絶命した。

 

マーカスが高速で移動した物体の方に目を向けると、

銀色の毛に覆われた身長約2m程の犬の様な顔をした男が立っていた。

まるでの姿をしただった。

 

「シュワッ」

マーカスが叫ぶと

 

「ぐわわッ!」

腰鉈が人狼の左肩に食い込んでいた。

 

どうやらマーカスの咄嗟の判断で、

両手で持った腰鉈が降り下ろされたようだ。

 

「くッ・・・この餓鬼がッ!」

「生かしてやった恩を忘れたか!」

人狼は食い込んだ腰鉈を右手で掴む。

 

まるで腰鉈のダメージを感じていない様子だ。

 

「くッ・・・」

マーカスは絶望しながらも、人狼を睨み付け威嚇する。

 

圧倒的な力で腰鉈が押し戻されていく。

 

!!!!?

 

人狼の後方に謎の人影がマーカスの眼に映った。

 

「何ッ!?」

人狼も何かの気配を感じ、後ろを振り向こうとした瞬間・・・

 

その影の突き出した包丁が、振り向こうとした人狼の右脇腹に突き刺さり、

倒れこむ勢いで包丁は人狼の体に深く入っていく。

 

「ドサッ!」

影の正体はトモタケだった。

トモタケが包丁を捻ると人狼は断末魔の叫びを上げ、やがて絶命した。

 

「お前がこの作戦を急に断るなんておかしいと思っていたんだが」

「あらかじめ倉庫に隠れて様子を伺っていたんだな」

マーカスは震えながら言う。

 

「何が起こるか分からないなら保険は必要でしょう」

「しかし、マリオさん達は救えませんでした・・・」

トモタケは悲しみと恐怖に震えていた。

 

「とりあえず、マリオさんの家に帰ろう」

「ウルフの仲間が来る前に・・・」マーカス

 

2人はむせ返るような血の臭いのする倉庫を後に

マリオ邸に向かった・・・。

 

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